6枚ハギのシンプルなベースボールキャップ。
サイズ調整用のアジャスター付き。
デザインはシンプルでごく普通の形に見えますが、ここに辿り着くまでにはかなり時間と労力をかけています。
革の帽子は、布帛の帽子と同じ型紙で製作してもどうしても納得できる形にならず、サンプルを作っては型紙を引き直し、また作って修正する。その繰り返しを何度も続けました。
正確な回数は覚えていませんが、少なくとも10回以上。
帽子はわずかな違い、数ミリの差でも全く別物になってしまう。
そのバランスを整えるのが一番難しく、そして一番重要で僕が拘りたい部分。
シンプルだからこそ、シルエットと被り心地が重要だと考えています。
クラウンのステッチは、一本針ミシンで一本ずつ縫っています。
量産の帽子で一般的に使われる二本針ミシンは、2本のステッチを同時に縫える反面、ステッチ幅が約1cmほどと広くなります。
布帛であれば問題ありませんが、レザーだとどうしてもその幅が野暮ったく見えてしまう。
そのため、一本針ミシンで一本ずつステッチを入れることで、ステッチ幅を約4mmまで詰め、シャープな印象に仕上げています。帽子に限らず洋服でも、ステッチ幅は狭い方が少しのズレでも目立つので高度な技術が必要となります。
サイズ展開も、サイズ調整ができるにもかかわらずフリーサイズにはしていません。
4サイズで展開しています。
一般的な量産のベースボールキャップは、サイズ調整を前提にワンサイズで作られることが多く、アジャスターで無理に絞ったり広げたりするので、シルエットが崩れやすい。
さらに、サイズ展開の方法にもこだわりがあります。
量産では、6枚あるクラウンのパーツのうち中央のパーツだけでサイズを調整し、他のパーツは共通で使う方法がよく取られます。
効率はいいですが、マスターサイズはバランスが良くても、展開した他のサイズでは中央のパーツだけが変化するため、全体のバランスが崩れやすい。
また、サイズが大きくなっても深さが変わらないという問題もあります。
このキャップでは、クラウンの6パーツすべてをサイズごとに作り直しています。
そのため、サイズが変わってもシルエットとバランスを保ちつつ、自然に深さもサイズに合わせて変わる設計になっています。
シンプルに見える形ですが、細部の積み重ねで成り立っている帽子です。